座薬

ほとんど鳴くことのなかったかりんが鳴き始めた頃
確かに、自分の意思や要求を伝えようとして鳴いていました。
しかし、今は、その頃とは明らかに違う鳴き方になっています。
ただただ…鳴いているのです。

夜鳴きも、ほぼ例外なく毎晩のことになりました。
母さんがどんなに声をかけても撫でても、その声は決して届くことなく
同じ調子の大きな鳴き声がずっと続きます。
酷い時には、3時間近くも鳴き続けました。

少し前、「夜鳴きが酷くなったら、無理せずに言ってください」と
かかりつけの病院の看護師さんに声をかけてもらっていました。
自分では、「まだまだ、心身共に余裕はある」と思っていたものの
やはり、限界点に達してしまう前に相談してみることにしました。

現状を話した結果処方されたのは、神経の興奮を抑制し
けいれん発作などの症状を抑える抗てんかん薬の座薬でした。
(「抗てんかん薬?」と思ったのですが、この続きはまた)

次の日、そろそろ寝ようかと思った頃に鳴き始めました。
大興奮しているかりんに恐る恐る投薬したところ、だんだん興奮が治まり
10分後くらいには、気持ち良さそうな眠りに落ちました。
そして、その夜は愚図るかりんに起こされることは一度もありませんでした。

夜中に起こされることなく寝たのは、はてさて…いつぶりでしょう。
かりん自身も、ぐっすり寝て身体を休めることができたと思います。

薬を使わずに済めば、それに越したことはないのでしょうが
そうも言っていられなくなりました。
これからは、この薬がかりんと母さんたちの助けになってくれそうです。

エネルギーを大切に

かりんライダー】になってはいるけれど、身体を起こしたかりんのほぼ正面顔。
それも今までとほぼ変わりなく見えるかりんの姿を、久しぶりに見ることができました。
この、「吠えていないかりんの顔」は、今や決して普通ではなくなっています。

夜は1時間半から2時間おきに愚図り始め、吠えながら動こうとします。
身体を抱き上げて立位にしたり、身体を横たえたまま動かしてみたり
水を飲ませてみたりしても、鳴き声はどんどん大きくなるばかりで
収拾がつかなくなることがしばしばです。
そうなると、鳴き疲れるのを待つしかありません。

また、近頃は【かりんライダー】になった瞬間から大きな声で吠え始め
クッションから下ろすまで吠え続けます。
ですから、以前のようにこのまま寝てしまうことはなくなりました。
おそらく、今のかりんには、この体勢が辛いものになっているのでしょう。
ウィーンウィーンと大きな音を立て、部屋の外から入ってきた掃除機に
ほんの一時、真顔になったかりん
最近では、ごくごく珍しい普通の顔です。

寝ているか、延々と吠えているか、母さんが日々目にするかりんの姿は
このどちらかしかない…と言っても良いくらいです。
頑張って食べているご飯も、その栄養が身体に蓄積されることなく
吠えることに費やされている気がしてなりません。

ねぇねぇ、かりん
貴重な貴重なエネルギーを、もっと大切にしようよ~。

桜下に吠える

5年前頃からお花見に出掛けている公園の河津桜が咲き始めていると
ローカルニュースで紹介されていました。
3月に入ってからが見頃のようですが、2月の最終日に行ってきました。

満開にはまだ早いけれど、樹によっては多くの花が開いていました。
午後からなら、青空を背景に写すことができたと思いますが
人混みを避けて午前中に出掛けたので、空の色は今ひとつです。

かりんは、いつもと違う場所と空気感にちょっと戸惑い気味で
Kちゃんに抱っこしてもらって、桜の花に顔を近づけても無反応。

それならば…と、母さんが桜の枝を掴んで鼻先に持って行ったら
クンクンする間もなく、花びらに食らいつこうとしました。
今のかりんにとって、鼻先に出されるのは食べ物しかないものね~。

そして、ほどなくして大きな声で鳴き始めました。
「さくら~、さくら~、弥生の空は~♪」な~んてね。

去年の目標のひとつで、やはりこの時期に達成した【まず 河津桜
あれから1年が経ち、今年もかりんと河津桜を見ることができました。
今年は、今までにない「吠え声付き」…でねっ。

不自然な寝姿

近頃のかりんは、かりんライダーになってご飯を食べる時以外は横になっています。
と言うよりも、身体を横たえていることしかできません。

それも、こんなふうに非常に不自然な格好で~。

時々、辛うじて動く前脚をシャカシャカしつつ、鼻先を巧みに使いながら動くのですが
あまりにもシャカシャカ動かすので、フリースなど化学繊維の敷物の上では静電気が発生。
空気が乾燥しているこの時期は、かりんに触れてバチッ☆となってしまいます。
ですから、最近は綿毛布を敷くことで、できるだけ静電気が起きないようにしています。

また、認知症のせいなのか、手近にある物の隙間に頭を突っ込みたがります。
そのまま落ち着くこともあれば、二進も三進もいかなくなってしまい
大きな声でギャーギャーと泣き叫ぶこともしょっちゅうです。

もしも、まだかりんが歩くことができていたら、部屋をグルグル歩き回って
家具の隙間にはまり込んだりしていることでしょう。

畳んで置いてあった母さんの羽根布団に、頭を突っ込んで寝ていたかりん
そっと布団をよけると、かりんのちょっと迷惑そうな顔がありました。

かりん探し

かりん」と呼べばこちらを向き、母さんの顔を見ます。
そして、母さんの口から出る言葉に耳を傾け、理解しようとします。

愛犬と暮らす中で、これらは喜びを感じられることのひとつですが
そんなやり取りが、ほとんどできなくなりました。

母さんの言葉は、かりんの耳をすり抜けていきます。
母さんの方を向いているようであっても、目が真ん丸に見開かれていても
視線は母さんの後ろへと突き抜けています。

そこにいるのは、正真正銘、紛れもなくかりんではあるのですが
母さんの頭の中のかりんとは、明らかに違っています。
それでも、やっぱり…間違いなくかりんです。

顔を近づけて、耳元で「かりんかりん!」とささやき続けます。
マズルにそっと手を添えて、撫で続けます。
すると、記憶の中の何かを思い出すのか、穏やかな表情に変わります。
そんな時、やっとかりんを見つけることができます。

そんな感じで、今は、日々「かりん探し」をしています。
母さんのことがわからなくなっても、母さんがかりんを見つけるからね。
大丈夫!!